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 ペットショップトラブル

病気であると知らずに病気の犬を買いましたが、業者の契約書には「ペットは生き物であり現状有姿で販売しますので、返品、引き取り、交換、損害賠償はできません」とする条項があった場合、消費者はペットショップに対し、何も請求できないのでしょうか?

民法では、引き渡された商品が契約の内容に従った品質を備えていない場合、買主は、原則として損害の賠償を請求したり(損害賠償請求:415条1項および2項)、契約を取りやめにしたりできます。契約を取りやめて白紙化することを、契約の「解除」といいます(541条、542条)。
また、商品の修理を請求したり、代わりの物の引渡を請求したりできますし、代金の減額を請求することもできます(契約不適合責任:562条、563条)。
 この契約書には返品や引き取りができない、交換も損害賠償も請求できないと書かれており、売主としての責任を全面的に免除しています。消費者契約法では、業者の損害賠償責任や契約不適合責任を全面的に免除する規定や、消費者による契約の解除を認めない規定は無効と定められています。したがって、業者のこれらの責任を免除する条項は無効です。

この条項が無効とされる結果、買ったペットがその時点で病気にかかっていた場合には、民法の原則にもどって、消費者はペットショップに対して、治療費等の損害賠償を請求したり、代わりの健康なペットとの交換を請求したりすることが可能ですし、病気が重い場合などでは契約を解除して代金の返還を請求することも可能です。

上記に加えて、「なお、引き渡されたペットが引渡時に病気にかかっており、後にこれが原因となって死亡した場合には、同種、同等、同類のペットをお渡しします。」との条項があり、実際にペットがその病気で死亡した場合に、代わりのペットをもらうのではなく、損害賠償を請求することはできますか?

消費者契約法8条2項1号は、事業者が契約に応じた代替物(この場合は同種の健康なペット)を引き渡す場合には、業者の損害賠償責任を免除することも許されるとしています。消費者が代わりの物を得られれば損害賠償を請求する必要はないからです。
 Q2では、死亡の際に代わりのペットを引き渡すことになっているので、損害賠償責任を免除することも許されるのかが問題となります。上記の条項はまさに同法8条2項1号にあたり、損害賠償責任を免除することは許されそうです。

 しかし、ペットは単なる商品とは異なり、特別の愛情の対象であるのが通常です。このようなペットの特殊性を考えれば、他のペットで代替できない場合があると考えられますので、先の条文が想定している場合にはストレートにはあてはまらないと考えられます。したがって、代わりのペットでは満足できない場合、慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。

 では、代わりのペットを引き渡す期間が、引渡後2週間以内に限定されている条項であった場合はどうでしょうか。

 民法には、買主が病気を知ってから1年以内にその旨を売主に通知しないときは上記の諸権利を行使できなくなるとの規定がありますが(民法566条)、病気に気づくまでの期間は限定されていません。したがって、この期間を2週間に限定する条項では、消費者に代わりの物の引渡を求める権利を保障したことにならず、同号の条件を満たしているとは言えませんので、2週間を過ぎた後でペットが死亡した場合であっても、消費者はペットショップに対して上記の諸権利を行使することができます。
 また、消費者契約法10条は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害する条項を無効としています。この場合の責任追及期間を引渡後2週間に限定する条項は、同条にも違反しており、無効と考えられます。

契約書に「ただし、上記の諸権利を行使するには、あらかじめ、売主の指定する獣医で診察を受けていただくことが必要です。」との条項があり、ペットショップの指定する獣医で診察を受けなかった場合、損害賠償請求や解除はできないのでしょうか?

ペットショップ指定の獣医の診察がなければ権利を行使できないとする条項の効力が問題となります。

病名や死因が判り、ペットが病気にかかっていたことが明らかであれば、必ずしも特定の獣医の診察を要件とする必要はないはずです。

この条項は、消費者の権利行使に特定の獣医での診察という条件を課するもので、消費者にとって不合理な規定であるといえますので、消費者契約法10条に反して無効と解されます。したがって、消費者は、ペットショップ指定の獣医の診察を受けなくても、購入当初から犬が病気であったことを証明できれば、上記の諸権利を行使できると解されます。


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